最近どうも気になっているラーメン屋があって…。

はじめてその前を通ったときは、そこがラーメン屋であることに気づかなかった。
気づいたのは、その後いつだったか、カウンター席でラーメンを啜る人の姿がちらりと見えたとき。
ここがラーメン屋かと驚いたが、そのときは、それ以上に興味を持つでもなく、思い出すこともなく時が過ぎ去った。
気になり始めたのは、その店のことを書いてある幾つかのブログにたどり着いてからのこと。
懐かしい昭和の雰囲気が漂うレトロな店内。
高齢の女将さんの明るい人柄。
常連さんとの家族のような温かい会話。
透明感のあるスープに、程よい茹で加減の麺、淡くシンプルなおいしいラーメン、等々。
こんなことが異口同音に語られていたのだから…。
と、そんなわけで本日そこに行ってきた。
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「はじめまして」と店に入っていくと、
「いらっしゃい」と人懐っこい笑顔。
暑い中を自転車で行ったので、額の汗をタオルでぬぐいながらだった。
「あら可哀想に、ここは暑いのよ、それでもいいの?」
「はいはい、それはもう覚悟のうえで来ましたから」
冷房が無いことを気遣っての言葉に親しみが感じられ、初めて来たという感じがしない。
カウンターには、常連さんらしき2名の男性客。女将さんとの鹿児島弁での会話は、まるで親戚みたいな雰囲気。

「ご飯はこのくらいでいいね?」
「うん、よかど」
「足らんかったならお代わりをしなさいね」

仕上げのニンニクを摩り下ろしながら女将さん、
「このくらいでいいですか?」
とこちらの好みを確かめる。
「にんにくを擦るのも、けっこう力仕事じゃないですか?」
と問い掛けると、
「擦ったのを置いておけば楽なんだけどねぇ。アタシはそれじゃ嫌なの。食べるときにこうして摩り下ろさないと、味が良くないのよ。金(カネ)のおろし器も使わないの。陶器じゃないとニンニクの色が変わってくるのよ」
と、抑揚の大きな口調で楽しげに語る。
漬物はボールに盛ってあって、好きなだけ小皿に取れる。
「胃に障らないから、たくさんどうぞ。干してない大根だから。」
なるほど、と思いながら、取り箸を取った。
巷のラーメンに比べると、一口目に感じる味は、かなり静かなもの。箸が進むにつれ、やわらかな味わいがじわじわと伝わり、スープが半分になった頃には「美味いなぁ」となり、完食する頃には「また食べたい!」と思ってしまう。
5年前に亡くなったご主人の、「毎日食べても体にきつくないように」という思いから、このラーメンになったのだそうだ。
女将さん、現在77歳。表情も身のこなしも生き生きとしていらっしゃる。昔話や最近の心境などを、飾り気の無い鹿児島弁で楽しげにお話になる姿が印象的だった。
ゆで卵1個のサービス付で300円。大は350円。
お昼のみの営業で、日曜定休。7月~9月の暑い間は、土曜日も休み。
『ほりえラーメン』 @鹿児島市堀江町
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