土曜日の夕方、僕は鹿児島市の中心地から少し外れた古い商店街を歩いていた。
昔は賑わいを見せていたであろうその街も、今では下ろされたシャッターが目立ち、米屋、煙草屋、花屋、クリーニング屋などが、ぽつりぽつりと店を開いている状態。
猛暑も日が傾くにつれ峠を過ぎ、近所のおかみさん同士の立ち話がどこからか聞こえてきた。
ふと会話が途切れ、誰かを呼ぶ声が響いた。
「おねえちゃーん」
僕にとって、それは単なる環境ノイズだったのだが、「おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃーん」と、繰り返されるうちに、それが言葉として耳に入ってきた。何事だろうと思い振り返った。
すると…、
声の主の視線は、まっすぐ僕を捕らえている。
尚且つ、それでも僕を「おねえちゃん」だと思い込んで話しかけてくる。
そこでハタと気づいた。
そのとき僕は、炎天下を長時間歩くため、バテないように頭にタオルを巻き、アラブ人女性のように顔が隠れるような格好をしていた。男性としては肩幅が狭いほうで胸板も薄い(そのせいか、ほんのたまに、後姿を女性と見まがわれることがある。後ろから「おばちゃん」とか「奥さん」とか呼びかけられてムッとしたこともある)。
そこで、ちょっとイタズラ心が…。
頭に巻いたタオルをバサッと取り払いつつ、
「おねえちゃんじゃなくてオジサンだけど」
御婦人お二方、一瞬「ハトに豆鉄砲」状態。ちょっと遅れて大爆笑。
「あはははは〜〜!」
「こんなオレンジ色のティーシャツなんか着てるから、女性だと思ったんでしょ?」
「いや、しぐさがなんか」
しぐさ?
仕草が女性っぽいわけがない。僕はただ歩いていただけなのだ。
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ちょっと 後ろ姿なんぞ 鏡に映して撮影してみた。

髪が長いのは、単に床屋に行くのをサボっているため。
顔はこんなだし…。