別府といえば、大方の日本人は、温泉で有名な大分県別府市をまっさきに思い起こすだろう。
でも、人名としての「別府」さんは、大分ではなく、鹿児島県に最も多い。

2007年10月までに発刊された全国の電話帳への別府姓の記載数は2600件であるが、そのうち496件が鹿児島県。つまり、別府さんの5人に1人が鹿児島県人。
別府姓の有名人としての筆頭格は、西南の役で西郷隆盛の介錯をした別府晋介だろう。
個人的な知り合いの中にも、高校時代のクラスメイトに別府君がいた。
鹿児島に多いといっても、「別府」という名字から「鹿児島らしさ」を感じ取るのは、ちょっと難しいかも知れない。別府温泉のイメージが強すぎる。
だが、少し視野を広げると「鹿児島らしさ」が見えてくる。「別府」を含む名字のヴァリエーションが鹿児島には多い。
「○別府」という、「別府」を含む3文字姓が多数存在するのだが、これがいかにも鹿児島らしい。

↑ 社名ではあるが、ほぼ確実に名字。




その3文字名字の上に、さらに一文字加えた4文字名字までが存在する。

これも、「いかにも鹿児島」である。島津支配が700年と長きに渡り、武士人口が多増える一方で、名字を増やさなければならなかった事情が窺い知れる。
発音のヴァリエーションにも驚かされたことがある。
再度登場。

この文字列を「かみべっぷ」さんとも「うえべっぷ」さんとも読まない方がいらっしゃる。
「うえんびゅう」さん
とか
「びゅう」さん
と読む方の存在を最近知った。
たぶん、少数派だと思う。小学校の同級生で「上別府(かみべっぷ)」さんという女の子がいたが、「うえんびゅう」さんには、まだ直接会ったことはない。
しかし、80代の父と70代の母は、さすがに鹿児島生活が長いだけあって、「うえんびゅう」さんを知っていると言っていた。
でもねぇ…
「別府」⇒「びゅう」
なんでこう読むの?
調べてみると、
「別府」という文字列を「べふ」と発音する地名がある。
そこでふと考えた。
「蝶々」は、かつて「てふてふ」と表記されていた。
「てふ」が「ちょう」に化けるのであれば、
「べふ」が「びょう」に化けても、
さらには、その「びょう」が「びゅう」に化けたとしても
それほど不思議なことではない。
前述の、上別府 を ⇒ びゅう と読むケースについては…、
たぶん、単純な省略だと思われる。
だが…
「上別府(うえんびゅう)」さんはいても
「下別府(しもんびゅう)」さんは、いない。
「北別府(きたんびゅう)」さんもいない。
「別府」部分を「びゅう」と読むのは、
「上別府」さんに限られる。
それについては、今のところ謎である。
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以下は、2007年10月におけるの「別府」を含む名字の電話帳記載状況。
苗字 全国件数 鹿児島件数 最多県
別府 2,600 496 鹿児島
今別府 402 180 鹿児島
上別府 280 154 鹿児島
西別府 80 44 鹿児島
古別府 53 39 鹿児島
下別府 106 32 宮崎
東別府 46 29 鹿児島
中別府 124 31 宮崎
福別府 35 22 鹿児島
岡別府 24 17 鹿児島
北別府 27 13 鹿児島
渕別府 15 9 鹿児島
春別府 7 5 鹿児島
脇別府 3 2 鹿児島
内別府 1 1 鹿児島
淵別府 5 3 鹿児島
南別府 0 0 古い電話帳には、記載があった模様。
柳別府 6 2 大阪
吉ケ別府 14 12 鹿児島
下今別府 1 1 鹿児島
上今別府 3 2 鹿児島
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