靴を買うときは、いつも手間取る。顔形が人それぞれであるように、足の形も百人百様、誰にとっても靴選びは大変なのかもしれないが、たぶん人様より靴探しには苦労しているのではないかと思っている。僕の足は、幅が広い上に指が太く、まるで白土三平が描く少年忍者「サスケ」の足みたいな団子状なのである。
長野県に住んでいた頃は、馴染みの靴屋さんがあって、いつもそこで買うことにしていたが、鹿児島にUターンしてからは、あまり熱心に探していなかったこともあって、そのような店はまだ見つけられずにいた。
そんなわけで、前回スニーカーを買い求めたときは、ホームセンター行き、EEEサイズのモノを購入したのだが、結果は失敗だった。
いくつか試着してみた中で、最もフィット感のあるものを選んだつもりでも、ちょっと履いてみたぐらいでは長時間歩行による影響までは分からない。連日歩き回っているうちに、第2指の裏側にマメが出来、第5指は激痛に見舞われた。それでも我慢して履き続け、3ヶ月かけて履き慣らした。靴のほうも型崩れしたが、足のほうでも靴の形に合わせて無意識に指先を窄ませる技を習得してしまったのだ。
その靴も、とうとう底に穴が空き、次代靴を買うことと相成った。
前回購入時とは違って、今回は、ちょっと印象に残っている靴屋があった。

西田本通りに面したこの店。「大サービス」と手書きされた短冊がぎっしりと並び、所狭しと並べられた商品にも手書きの大きな値札が添えられている。店主さんのものすごいエネルギーが漂っていて、1度見ただけで忘れられない店になっていた。

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「こんにちは。はじめまして!」
そう言って入ってゆくと、店主さんが笑顔のお出迎え。

スニーカーが欲しい旨と、足の形状、用途について説明すると2~3の候補品を出してきて、その中でも「昨日入ったばかり」という、一流メーカー製でスポーツ用の一品を勧められた。試し履きしてみると、実に感触が良い。形状だけでなく通気性にも考慮してあり、蒸れないのだそうだ。少しゆるめだったので、中敷をサービスしてくれた上に、価格は定価の2割引き。
大型店やデパートよりも安くしてあるので、遠方からのお客さんも多く、中には指宿から来るお医者さんもいるのだとか…。
創業80年。東京から呼び戻され、いやいや継いだ2代目なのだと、面白おかしく話してくれた。
ほんのちょっとの時間だったが、なんだか愉快な気分にさせてもらった。歩くのがつらかった先代靴とちがって、今後は歩くのが楽しみだ。
そんなわけで、この靴屋さんには、これからも何度も行くことになるでしょう。
鹿児島市西田2丁目4-2
有村履物店. 電話 099-254-7949.
※宣伝料はもらってませんよ(笑)