我が家から歩いて2~3分のところに、こんな史跡が、なにげなくあったりする。


富国強兵・殖産興業政策を推し進め、大砲を造るための反射炉をはじめ、溶融炉、硝子窯など多くの設備を備えた一大工場群を築いた。
これらの工場群はのちに「集成館」と命名され、集成館でおこなわれた様々な事業は「集成館事業」と総称される。
斉彬がこれらの事業を推し進めた背景には、産業革命以後活発な西欧諸国の植民地活動にあった。
1840年中国とイギリスの間に勃発したアヘン戦争によって、中国はイギリスに完敗。大国中国の敗戦によって、いよいよその触手が日本へと向けられるであろう危機感を感じた斉彬は、日本を西欧諸国のような強く豊かな国にしなければならないと考え、幕府や大名へ富国強兵策を提唱し、自らも集成館事業を興した。
人材登用においても、西郷隆盛、小松帯刀等、優れた人物を世に出し、徳川家から家定の正室を求められた際には、分家である今和泉島津家の娘一子の資質を見抜き養女とし、実子として徳川家に送り出している。
*** *** *** ***
「英明」とは、こういう常人には成し得ぬ優れた業績を残した人物のことを言うのであって…。
NHK大河ドラマ『篤姫』では、将軍という座に在りながら「うつけの振り(ドラマでの設定)」をしていた家定を、「世に噂されているほどの暗愚ではなかった」というのならまだしも、篤姫をして「英明」とまで言わしめている。あれは飽くまでもドラマでのキャラ設定であり、実在した家定が「英明」だったなどとは誰も思わないだろうが、見ていてどうも抵抗を感じていた。
孤独だった家定が、聡明な御台所に対して次第に心を開き、愛が育まれてゆくが、その愛も突然の死により引き裂かれる。加えて、養父斉彬もほぼ時期を同じくして亡くなり、篤姫は一度に拠所を失うことになる。
このあたりの展開は、歴史ドラマという形を借りてはいるが、人間の心理を自由かつ大胆に描き出す「仮想空間における愛のドラマ」であり、そういう意味で面白く出来ていると思う。
2人の愛が次第に深まってゆく様子が描かれるにつれ、抵抗を感じていたはずの「非現実的な家定のキャラ設定」も、史実を此処其処にちりばめながらの大胆な発想力に拍手喝采しながら楽しむようになっていた。
ま、そんなわけで、今ではスイッチを入れ替え、エンターテインメントとして毎回楽しみに見ている。ちゃんと、目に涙なぞ溢れさせたりしながら…。