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 ふと思い出したことがある。

 若かりしあの日、彼はこう言った。

 「俺はどっちでもいいべ。」

 函館訛りで発せられたその言葉。
 
 本心は、まったくその逆なのに…。

  知らばっくれている彼の表情が小学生みたいで可笑しかった。言葉の裏には恋心が隠されていることを僕は知っていたから…。

 音大浪人時代、予備校で知り合った友。函館出身で指揮者を目指していた、いつも無精髭の加納君。

 その言葉にたどり着くまでの経緯を簡単に書いてみたい。

 北海道出身の加納君と、鹿児島出身の僕が、どういったきっかけで意気投合していったのかは覚えていない。

 意気投合…。

 ん? ちょっと待てよ…。

 なんとなく意気投合していたみたいに思っていたが、よくよく思い出してみると、

 いやいや、全然そんなことなかった。

 僕はロックと近・現代音楽に傾倒していたが、加納君は、ロマン派のオーケストラ曲に心酔していた。

 1975年といえば、プログレッシヴ・ロック・バンドのエマーソン、レイク&パーマーが3枚組ライヴアルバムを発表した翌年である。19歳だった僕は、キーボード奏者のキース・エマーソンを神と仰いでいたし、彼の作曲による『タルカス』をロック史上最高の名曲だと思っていた。
 
 その曲を、加納君は一言で切り捨てた。

 「くだらんべ」

 「ええ~~~~? なんで?」

 そのそっけない反応は、僕にとってどうにも許し難いものだった。 
 
 彼は答えた。

 タルカスでハモンドオルガンに続いて聴こえてくる、モーグ・シンセサイザーのポルタメントを効かせた吠えるようなフレーズ、あれが「くだらん」というのだ。

 なぜくだらないかという具体的な説明はなかった。

 話を聞いていると、加納君もEL&P結成以前のナイス時代から、キース・エマーソンに興味を持っていたことがわかった。ただし、彼にとってのエマーソンは、「ロマン派音楽的なセンスと情念を感じさせるロック・ミュージシャン」だったみたいなのだ。

 じゃあ、彼の好きな音楽は、どんなものなのかと言えば、

 スメタナ作曲『モルダウ』

 だった。

 それに対する、当時の僕の感想、

 「ただのオーケストラ演歌じゃん!」

 キース・エマーソンやピンク・フロイドが、ジャズや近・現代音楽を取り入れて進歩的ロックを作ったように、そのアイディアの宝庫から無尽蔵の宝を掘り出して、輝ける音楽を作りたい。

 と、そんな、まぁ…、ちょっと妄想にも近い野心を持っていた。

 クラシック音楽に対するスタンスは、全然違っていた。

 そんな二人が、なんで友達になっていったのか…。

 今考えてみると割と単純だ。

 北海道と鹿児島。 

 北と南の田舎者が、なんとなく触れ合うものを感じた。

 そんなところだ。

 加納君は、僕と違ってけっこう率直に自分の本心を明かすタイプで、会話の中で「田舎者だから」を連発したので、そんなところが、僕にとって付き合いやすかった。

 そんな田舎者同士がある日、ある時、

 「ジェット・コースターって、乗ったことあるか?」

 「ない」

 どっちが言い出して、どっちが答えたかは思い出せない。

 「じゃあ、後楽園に行ってみよう」

 そんな話になった。

 すると、加納君がこんなことを言い出した。

 「好きな子がいるんだけど、自分から誘う勇気はないから、めどうから誘ってくれ」

 その申し出を二つ返事で請け負った。

 小柄で可愛い子だったけど、あの頃の僕には恋愛スイッチが入っていなかった。

 なんとも思っていなければ、行動に移すのは簡単だ。

 で、加納君同行で、その女の子と対面し、後楽園遊園地に誘ってみたのだが、

 「え? ジェット・コースターに乗ったことないの?」

 東京生まれの彼女は、

 いまさらジェット・コースター?

 みたいな、田舎者に対する興味薄げな反応だった。

 その後の具体的な会話は覚えていないが、加納君のためを思って、あれこれ誘いの言葉をつないで、ようやくOKを取り付けた。

 その途中で聞かれた言葉が、

 「おれはどっちでもいいべ。」

 という函館訛りの、本心とは、まったくその逆の、小学生みたいな反応だったわけで…、

 「おいおい、お前、人を使って自分は隠れて…、ちょっとずる過ぎない?」

 とも思ったが、

 なんだか

 「こいつ、カワイイやっちゃ」

 みたいな感じのほうが勝った。

 その後、3人でのデートが実現したかというと、

 答えは

「NO」

 よく覚えていないのだが、

 加納君も僕も、住んでたアパートに電話がなかったので、

 クラスメイトの誰かのところに「都合が悪くなった」っていう電話があって、

 伝言があったような…

 そんな気がする。

 今思えば、一旦出したOKも、しつこい誘いをその場で断ち切るための方便だったんだろう。

 でも、そんなこと、なんで今頃思い出したのか…、

 よくわからんのだけど、

 たぶん、今の話に登場した二人は、このことをすっかり忘れているんだろうなぁ。

 もし思い出したとすると、あの時の時の僕の印象は、

 「その気もないくせに、妙にしつこく誘う変な奴」

 だったんじゃないかな…。

 女の子って、相手が自分をどう思ってるかなんて、敏感に察知すると思うしね。

 そんなことを思うと、今さらながら、ちょっとだけ言い訳のひとつもしたくなる。

 でも、

 その後、その彼女と付き合いづらくなったという記憶はなくて、全然普通に接してたと思う。


 みんな若くて楽しかったな。

 今頃、どうしてるんだろ?
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