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瞳がほほえむから

 午後2時を少し過ぎた頃、カーラジオから今井美樹の『遠い町から』が聴こえてきた。その歌をそれまで聴いたことはなかったが、そのタイトルと歌手の名前から、ある記憶が蘇ってきた。
 
 遠い町といえば、真っ先に思い出すのが20年も住んだ長野県上田市。そこから、車で20分ほどの町に行きつけのパブがあった。知り合いの絵描きさんから紹介してもらった店で、気さくで話し上手聞き上手なママさんと、気立ての良い女の子が揃っている感じの良い店だった。

 そのパブのママさんにはずいぶんお世話になった。定休日の日曜日に店を借りて2度ほど、シンセサイザーのコンサートを開かせてもらったし、大事なお客さんが来るからと、ピアノ演奏を頼まれたこともあった。あるときからは、週に1度、お店に置いてあったグランド・ピアノを使い、レッスン会場として無料で提供してもらっていた。
 そんな具合に、単なるお店と客の関係以上のお付き合いをさせてもらっていたが、それもママさんの人徳ゆえのことで、世間で言うところの男女の関係は、精神的な領域に限ってみても、残念ながら100%無かった。

 ここで話は今井美樹に戻る。彼女の代表的なヒット曲『瞳がほほえむから』を初めて聴いたのが、そのパブだった。勤めていた女の子の中の1人の十八番で、特に美声というわけでもないのだが、個性的な声で魅力的に歌うので、1度聴いただけでその歌を気に入ってしまい、よくリクエストして歌ってもらったものだ。
「○○さんが聴いてると緊張する!」
 なんて言いながら、リクエストには必ず応えてくれた。初めてオリジナルを聴いたときは、今井美樹の歌が少し味気なく聞こえたほど、僕にとって、その子の歌声は魅力的だった。だから、客としてその店に行くときは、『瞳がほほえむから』を歌ってもらうのが楽しみだった。

 いつだったか、例の歌を歌う彼女の声に、いつも以上に情感がこもっていたことがあって、歌い終えてから感じたまんまを伝えた。
「今日は、なんだかいつもより心がこもってたねぇ。なんだか幸せそうで、こっちも幸せになったよ」
「わかるの? わあい!そういってもらうと嬉しい! そうなんだぁ。幸せなんだよ」
 長い間遠方にいた彼と、しばらく振りに会えるのだと言っていた。恋する女の子の幸せそうな笑顔は、見ているこちらを和ませた。
 ところが、実は…、その時は詳しいことは知らなかったが、遠いところというのは、刑務所だったのだ。刑期を追えて出所する日が近かったのである。
 あの夜の嬉しそうな姿とは裏腹に、その日を境にトラブルが続いた。付き合っていた相手は、いわゆる「堅気」ではなく、繰り返し警察のお世話になるような男だった。何があったのか詳しいことは知らないが、今回実刑をくらったことで、男は店を逆恨みしていたらしかった。出所何度か店を訪れ、恐喝まがいの言動を繰り返し、その女の子も回りの信用を失ってしまった。とても店にいられる状況ではなくなってしまい、結局彼女は店から姿を消した。

 ざっとその程度のことしか知らない。知り合いの絵描きさんから聞いた話だと、その子がその後務め始めた店は、そのパブとは違い、限りなく体を売ることに近いようなサービスを要求される店らしかった。そのことを不憫そうにぽつりと漏らした声が耳に残っている。

 店を辞めてしばらくして、深夜のコンビニで、仕事帰りにその女の子とばったり会った。姿を見たとき、住所は上田だと以前聞いたていたことを思い出した。
「おお、久しぶりじゃん! 元気?」
「あらぁ、めどうさん! ひさしぶり! うん。元気だよ。こんな時間に起きてるの?」
「うん、仕事帰りだよ。相変わらず苦労してるからね。でも元気だよ」
「これから帰って寝るの?」
「そうだよ。ゆりちゃんも?」(仮名です)
「うん。やっと寝られるんだよ。じゃ、気を付けてね」
「そっちもね」
 レジ袋を下げて、屈託の無い笑顔を見せてくれたが、正面からこちらを向くことはなく、笑顔は最後まで肩越しのままだった。

 『瞳がほほえむから』。好きな歌だが、今でも聴くたびに、このことが思い出される。
 彼女が好きだと言っていたのは、歌詞のこの部分だった。

  迷った遥かな日々 涙じゃなく力にして
  あふれる想いを今こそ果てなく抱きしめて

「こちらをクリックするとYou Tubeの動画が開きます」

「この動画を見ると、彼女の人柄が伝わってくる」

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今井美樹 (1989/12/06)
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